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gamoyon Art labo

"大きな軒下空間を持つ社屋"

大阪市城東区に建つ、紙の卸売や貼箱事業などを営む企業の社屋ビル。

創業70年を機に、既存社屋の老朽化対応とともに機能集約を図る目的から、近隣の自社倉庫の敷地に倉庫機能と一体化した新社屋の建て替え移転が企図された。

 

建物本体は、1階に2層分の天井高を持つ倉庫機能と、2階のオフィス機能で構成される。本体前に付設するトラックヤードは、10トン・ウィング車による搬出入と倉庫作業時の雨除けを勘案し、本体から延びる奥行10m超の大屋根で覆い、側面をガラススクリーンでカバーしている。

これがこの建築の骨子であり、建物の半分近くを大屋根による半屋外空間が占める形となっている。

 

今回の計画では、新規事業として、多くの方にリソグラフやシルクスクリーンなどとともに多種多様な紙に親しんでもらえる創作スペース『gamoyon Art labo』がオフィス空間に併設されることとなった。ところが、このラボ・スペースは実質的には3階に相当する為、どのように一般の方にも抵抗なく上がってきてもらえるようにするかが課題であった。そこで、一気に3階まで上がってもらうのではなく、中二階にエントランスとともにポケットパークのような”木漏れ日テラス”を設け、通りを敷地内へと引き込むような形で街との連続性を保ちながら徐々に上方へと上がっていけるアプローチを計画した。

また、オフィスとラボ・スペースは完全に切り分けるのではなく、それぞれが程よい距離感でリラックスして過ごせる図書館のように、全体がゆるく伸びやかに繋がる一体感のある空間としてうまく馴染ませながら同居させることを目指した。

 

内装には、紙の原料にもなるヒノキ・スギを主とした木質仕上が多用され、特に天井については、内部のルーバー天井と半屋外の軒天井を同じヒノキ材で連続的に構成している。

 

トラックヤードは機能的要求から設けられているが、ここで重視したのは、このせっかくの大きなスペースを裏扱いするのではなく、積極的に街とも繋がっていける表の場所・会社の顔としてデザインしていくところにあった。日常は業務の為のスペースではあるが、休日にはイベント活用など地域開放もできる心地よい街の余白となることを期待した。それは、地域に根ざしながらの成長を見据える企業姿勢とも親和するものと思われたからで、クライアントにはそうした提案を快く受け入れて頂き、最後まで後押し頂くことができた。竣工後、そうした地域開放の取り組みも試みられており、「がもよんフェス」の会場としてなど既にいくつかのイベントを開催され大盛況を収められている。

 

大通りから一歩入った敷地ではあるが、企業イメージを投影した建物全体を包む軽快かつダイナミックな一枚の大屋根がアイキャッチとなり、大通りからも関心を惹きつける独特の存在感の獲得に繋がっている。また、軒樋や通り沿いに設けた揺らめくサインの細部にも紙をモチーフとしたユニークで親しみの感じられるデザインが施されている。

施設名称:gamoyon Art labo|東信洋紙株式会社新社屋

主要用途:事務所+倉庫

所在地:大阪市城東区今福西4-1-2

構造・規模:鉄骨造・2階建て

延床面積:596.76m2

施工:いなせ建設株式会社

​植栽:荻野景観設計

撮影:笹の倉舎 / 笹倉洋平

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