top of page

nicorire | にこりる

"きみの週末百貨、"

和歌山県紀美野町に建つ、週末限定営業の物販店舗である。多くの人が楽しめる場をつくり、地元に寄与できる活動を望むオーナーの念願であり、ここでは地元の手作り品をはじめ多彩な雑貨などを中心に幅広い品々が取り扱われる。

敷地が前面道路より高く、巨大な物流倉庫に隣接することから、それら来店への心理的障壁を克服することも建築には期待された。そうした中、この場所のポテンシャルを引出しつつ、人々の関心を引きつける佇まいとこの店の世界観を形成していくことが、ここでのテーマとなった。

紀美野町は、肯定的自虐PR「最高の'ない'がここにある!」を謳っており、起伏に富む豊かな自然やいぶし瓦の集落的佇まいを持つ民家などが町の素地である。過疎化の進む一方で、近年はUJIターンにより点在するようになったユニークなお店が、週末のホットスポットとして静かな賑わいを見せている。そうした状況に着目して、ここでは、町そのものを都会の百貨店とは対照的な "田舎の週末百貨店(=ゆったりした環境・時間とともに個性豊かな店々を巡る、一体的体験価値を提供する器)"と見立ててみた。その見立ての下、町の玄関口に位置する本計画では、この週末百貨店を形成する一店(点)であると同時に、その起点として、これからはじまる物語を期待させる賑わいの情景となる "きみの週末百貨、" を目指した。

計画においては、まず、建築の佇まい方と主張のバランスを模索しながら配置検討を行った。最終的には一旦、敷地状況に素直に所要の家型ヴォリュームを配置し、3段階の操作(Separate→Slide→Stretch)を施すことで、"6つの小屋の集合体"へと変換している。それにより、一定の秩序を伴ないつつ、町の素地や周辺環境とも呼応する多様で動きのある佇まいを生み出している。小屋同士のズレは内外に大小様々な場を生むと同時に、それぞれの小屋がここに集う多彩な雑貨たちの居場所を形成する。小屋ごとに分節されズレながら連なる内部は、ワンルームの広がりとアットホーム感が同居し、見え隠れしながら奥へ奥へと進みたくなる空間が広がる。光のフレーム(小屋同士の隙間)から射込む光が刻一刻と空間に変化をもたらすとともに、要所要所に設けた窓からは周辺環境を断片として程よく取り込み、風景を再編集することで独自の世界観をつくり出す。

既に口コミで、毎週末、近隣・周辺・県内外からリピーターを含む多くの老若男女で賑わいを見せている。ここでの賑わいは、小さな魅力ある店(点)の緩やかな連携がもたらす相乗効果によって、まち全体に小さな賑わいの連鎖が生まれる週末百貨店の可能性、つまり、紀美野町らしい持続可能なまちの活性化の一端を浮かび上がらせる。

nicorire|にこりる((和歌山県紀美野町に建つ物販店舗) 生成ダイヤグラム

主要用途:物販店舗

所在地:和歌山県海草郡紀美野町長谷402-1

構造・規模:木造・平屋建

延床面積:85.70m2

撮影:松村芳治

nicorire|にこりる

営業時間:毎週土曜日・日曜日10:00-17:00

bottom of page